発売が遅れていたジェミニのイルムシャーシリーズが、ようやく目の前に姿をあらわした。生産ボリュームの問題が発売時期を遅らせた一番の理由とは言うが、首を長くして待っていた読者も多かったに違いない。
　今回試乗したイルムシャーシリーズは、従来どおりイルムシャーの手によってチューニングが施されている。しかも、ニューモデルでは当初から開発に携わっているだけに、チューニングの自由度も高く、それだけ思いどおりのセッティングができたという。特にイルムシャーＲは１８０ＰＳをマークするツインカムターボエンジンとフルタイム４ＷＤという組み合わせ。クラストップのパワーは前後非対称トルク配分４ＷＤが確実に路面に伝達する。
　あいにく当日はウエット路面であったが、イルムシャーの実力を見るにはちょうど良かったかもしれない。Ｒは４ＷＤにもかかわらず滑りやすいタイトコーナーを難なくこなし、立ち上がりでは大きなトラクションによって確実にダッシュ。パッシブ制御による４ＷＳ効果も大きいものの、リアよりのトルク配分が乗りやすさにプラスとなっている様子だ。
　ハンドリングはさすがにイルムシャーが手掛けただけあって、いたってシャープだ。前後ともロールを押さえ込んだハードなサスペンションは、ステアリングに即座に反応。ノーズは気持ちよくピッピッとレスポンスしてくれる。ロールを生かしていないために、滑り込みやすい路面では限界が低い。時代の流れからすると少々古臭いが、気軽にスポーツドライビングを楽しむにはうってつけだ。また、４ＷＳ効果はロールが少ないために作動幅は小さく、ロータスほど違和感はない。
　パワフルさといった点では、さすがにターボの影響は大きく３５００ｒｐｍ以上でパンチ力を感じさせる。しかし、それ以下の回転域でのトルク不足は否定できず、インターセプトポイントも明確だ。トップエンドも７０００ｒｐｍで頭打ちとなってしまうためパワーバンドは狭い。高回転をキープしてこそＲの実力がフルに発揮できるのである。

レポーター：瀬在仁志

ホリデーオートBG

1990年7月号掲載